2012年2月21日火曜日

日本の地域  五 行動

ここまで述べたことを実現するために、具体的にどのようなことができるだろうか。ここでは案を挙げてみたい。

1      市区町村単位の中間支援組織
地域経営と対話の営みを促進するための着火装置として、市区町村単位での中間支援組織の設立を提案する。この組織は、最近ではまちづくり株式会社や、まちづくりNPOとしても知られている。東北では、県単位で岩手県、宮城県、福島県にそれぞれ復興連携センターがある。いわて復興連携センターでは、「地域住民による地域再生」をミッションとして掲げている[i]。活動内容は、「各種支援、助成情報の一元化と情報発信」、「地域住民のできる、やってみたいの掘り起こし」、「支援とできる、やってみたいのマッチング」、「地域住民による復興計画、復興宣言の作成や政策提言のお手伝い」となっている。
また、福島県いわき市勿来(なこそ)地区では、「勿来まちづくりサポートセンター」が、住民を巻き込んで未来のまちづくりを推進している。[ii]
この組織には2つの役割がある。1つは、プロデューサーとして、地域の事業を育て上げ、価値を発信していくことである。今東北では住民主導で企業再建や新しい事業開発など、様々な取り組みが始まっている。しかし、その事業を進めていくための人材や資金に困っている場合が多い。例えば、企画書の作成や、助成金の書類作成、広報ができる人が欲しいという時に、必要な手助けを得られる場所があれば、非常に心強い味方となる。このように、住民が何かやりたいことがあるときに、必要な手を貸す地域のよろずやとなるのだ。そして、その事業が展開できるように後押ししていく。
2つ目は、ファシリテーターとして、住民の話し合いの場を設け、住民の意見を基に地域の在り方を提言実行していくことである。地域の現状調査や、意見交換会を開催し、住民の意見が反映されるまちづくりをしていく。例えば気仙沼大島では、7080代で独居生活をしている方々が多くいらした。わざわざ介護を頼むほどでは無いが、買い物や通院など日常生活で多少の支えを必要としている。また、日中の時間を一人で過ごすことも多いため、話し相手が欲しいという声があった。こうしたニーズがあることが中間支援組織によって把握されれば、住民の方々と共に何かできることはないかと話し合うことが出来る。例えば、大島に多い空き家を安く貸し出す代わりに、高齢者のお手伝いをしてくれる人を募集しようというアイディアが出るかもしれない。家賃が安く、農地も付き、周りの農家から野菜ももらえるので食べるのには困らないという条件であれば、田舎暮らしをしたいけどお金はないという若い人が興味を抱く。中間支援組織は、こうした話し合いの機会を提供し、新しいアイディアを触発し、プロジェクトの実現可能性を高め、それを実行する際の手足となって動く。
こうした中間支援組織を市区町村ごとに置き、気軽に住民が立ち寄れる存在にする。運営体制としては地域のNPOが中心となる。そして地域に愛着を持ち継続的に関わる人々を核とする。そこに中央官庁や民間企業の経験者などで一定期間関わる人々を呼ぶ。プロジェクト遂行のために財務や法律の知識など専門性を持った人材が必要な場合は、そうした人材を連れてくる。地域リーダーの良き伴走者となるため、NPO、企業、行政が垣根を越えて連携するのだ。こうして住民による自治を促進していく。この仕組みが、今後の地方自治の未来の鍵を握る。








[i] いわて復興連携センター.「設立趣意書」. http://www.ifc.jp/media/about/setsuritusyushi.pdf (参照2012-1-27)
[ii]  東北復興新聞.「まちづくりNPOの可能性 いわき市勿来地区の取り組みにみる 前編」 http://www.rise-tohoku.jp/?p=947 (参照2012-2-21)



0 件のコメント:

コメントを投稿